「…何だコイツは?」
突如現れたソレを目の前にして、思わず政宗は呟いた。
政宗の愛犬である幸村の朝は早い。
起きて間もないというのに元気良く動き回り、部屋の中を駆け回る。
その有り余るほどの元気は、
朝にさほど強くない政宗が思わず根をあげたくなるほどだった。
そんな幸村の鳴き声で今朝も政宗は目を覚ました。
「shut up幸村、もう少し静かに…」
まだ覚めない頭を抱えて政宗が呻く。
だがそんなことはお構いなしにと幸村の鳴き声は止まなかった。
それにしても今日はいつになく吠えている、
と、寝起きの政宗は思った。
普段から朝にはしゃいで吠えることはあってもこれほどひっきりなしではない。
飼い主として常に幸村と接している政宗が察するに、
この声は、寧ろ何かを見つけて反応している時のそれだった。
「キャン!!」
リビングには幸村の声が響く。
思った通り、幸村は窓際でベランダの外に向かって吠えていた。
小さな体で一生懸命に吠える度に耳と尻尾が揺れている。
あまりの懸命さに、窓の外に鳥でも見つけたのかと政宗は思ったが、
どうやらそれは違うようだった。
「Hey 幸村。何をそんなに吠えて…」
「ましゃむね!!」
起きてきた政宗を見つけて幸村が声をあげると、
何かを知らせるようにガラスをペシっと叩いてみせた。
「………?」
それにつられるように政宗はベランダを覗き込む。
その瞬間。
窓越しに見えたその正体に、政宗の目は一気に覚めることになった。
「…猫?」
暫し流れた沈黙の後に、ようやく政宗が口を開いた。
窓一枚隔てたベランダにいたのは確かに猫ではあったが、
普通の猫とはどこか違っていた。
銀糸のような毛並みに、つり上がった目と尖った耳は確かに猫のそれである。
しかしきちんとした衣服を身につけていたし、
小さな後ろ足はしっかりと地面を踏みしめていて、
耳と尻尾さえなければ小さな子供にも見えるほどだった。
「…こいつぁ随分とCoolな猫がいたもんだ」
犬猫の違いはあれどまるで幸村のような出で立ちの猫に、
政宗は小さく口笛を鳴らした。
「それにしても、どうしたもんかね…コイツ」
しかしの口笛はにはすぐにため息に変わる。
一度は感心してみたものの、
突然現れた珍客をどうすればいいのか政宗は迷っていた。
このままこの猫がどこかへ行くのを静観することも出来るが、
どうやら飼い猫であるらしいこの珍客にそれは得策ではない。
そう思った政宗は窓の縁に手をかけた。
幸い幸村も猫も互いに警戒する様子もないし、
それならば飼い主を探す間だけでもここに置いておけばいい。
「しょうがない、少しの間なら小十郎も文句言わねぇだろ」
そうして窓を開けてやると、
辺りを見回しながら猫は入ってきた。
隣では幸村が興味深げに尻尾を振っているが、
とくに怯えたり威嚇する様子もない。
これならば大丈夫だろうと政宗が猫の前に手を伸ばした。
その瞬間。
「……!!!」
突然手に走った激痛に、政宗が声にならない声をあげる。
手元を見れば、先ほど自分が招き入れた猫が噛みついている。
さっきまでの態度の違いはなんだったのか、
そんな思いが頭をよぎったが今はそれどころではない。
「幸村、こいつどうにかしてくれ!離れねぇ!」
「ましゃむね!」
大混乱になった朝のリビング。
そこにちょうど帰って来た小十郎も加わり、
混乱は更に大きくなることは必須であった。
*Episode13へ続く?*
3のキャラを出したくてまずは一人出してみたんだけど…
この回じゃ名前出てないから誰かわからん!三成ですよ三成!(笑)
次はちゃんと名前とご主人さまを判明させたいと思います←
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