「いえやすぅうう!!!」
突如鳴り響いたチャイムに、いち早く反応したのは三成だった。
小十郎の手の中で、先ほどとは比べ物にならないほどの力で三成は暴れだす。
ここに迷い込んで来てから今まで声をあげて鳴いたことがなかっただけに、
その場に居合わせた者の驚きは大きかった。
「おいおい、何だってんだ!?」
「わかりません、チャイムを聞いた途端いきなり…」
驚く二人をよそに尚も三成は暴れ続ける。
その様子にただ呆気にとられていた政宗だったが、
再び鳴ったチャイムに意識を引き戻される。
こんな時に何てタイミングの悪い、と思わず舌打ちをしたくなるが、
そんな気持ちを抑えて政宗は玄関へと向かった。
「ましゃむね!!」
玄関ではチャイムを聞いた幸村が既に尻尾を振って待ち構えていた。
届かないドアノブにむかって跳ねる幸村を抱えると、政宗はその扉を開けた。
「悪いが今取り込み中なんだ、また後で…」
「久しいな独眼竜!」
扉が開くなり親しげにかけられた声、
その聞き覚えのある声に政宗の動きが止まる。
「……家康!?」
扉の前にいたのは黄色の服に身を包んだ、黒い短髪の青年。
背はだいぶ伸びたが未だ面影を残すその姿に、
政宗は記憶の中の懐かしい名を呼んだ。
「どうした、そんなに驚いたのか?」
そして知らぬ間に大きな声が出ていたのだろう、
政宗の驚きように家康も苦笑する。
だが突然の来訪者に政宗が驚くのも無理はない。
以前からのこの家康とは知り合いだが、こうして直接顔を合わせるのは久々のことで。
それが今日いきなり、
しかもこのタイミングで現れたことは政宗を驚かせるには充分すぎるほどだった。
「いや何でもねぇ、それにしても久しぶりだな」
本当に今日は色んなことが起こる、
そう思いながら政宗は家康へ手を差し出した。
その瞬間。
家の奥の物音が騒がしくなったかと思うと、
こちらへ全速力で駆けてくる足音が聞こえる。
「いえやすぅううう!!!!!!」
次に聞こえてきたのはこれまた聞き覚えのある叫び声、
しかし今度のそれはまだ記憶に新しいものだった。
嫌な予感を政宗が抱いたと同時に背中に衝撃が走る。
衝撃によろめいた政宗の背後にいたのは、
今まさに彼に飛びかからんとする三成だった。
奥から全速力で駆けてきた三成は政宗の背中を踏み台にして、
そしてその向こうの家康に飛びかかる。
このままでは家康の身に危険が及ぶ、
そう政宗が感じた時。
「三成!?」
激痛に悶絶する政宗の耳に聞こえたのは、
三成の名を呼ぶ家康の声だった。
***
「越してきた?隣に?」
「あぁ、信玄公の紹介もあってここを安く貸してもらえることになってな」
玄関前の騒動から少し経ち、落ち着きを取り戻したリビング。
そこで二人はようやく事の顛末を知ることになった。
「しかしまさか三成の飼い主がアンタだったとはな…」
事情を聞いた政宗がため息混じりで呟く。
三成に引っ掛かれ、噛まれたりと、
随分な苦労をしたにもかかわらず拍子抜けのする結果になったことで、
その声には明らかに疲労の色が見えていた。
「すまなかったな、三成が随分と世話になったようで」
「別に構わねぇよ、少し…いや大分大変だったが結局飼い主は見つかったわけだし」
先ほどまでの騒ぎをしみじみと思い出しながら、
気にするなという風に政宗は手を振る。
確かに三成には大分痛い目にはあわされたが、
こうして久しぶりの再会を果たし、
更に友人の助けになれたと思えば気は楽だった。
「これから三成共々世話になると思うが、よろしく頼む独眼竜!」
そう言って家康が手を差し出す。
その陽の光のような笑顔に、思わず政宗もつられて自らの手を差し出した。
「あぁ、こっちこそヨロシクな」
こうして新たな住人が増えたマンションは更に賑わいを増すことになった。
「ところで、一ついいか家康」
「ん、何だ?」
「さっきから三成がお前の腕にものすごい勢いでかじりついてるんだが…」
「あぁ気にするな!これは三成なりのスキンシップだ」
「いや、気にするなって言われてもよ…」
*Episode15へ続く?*
ようやくご主人様出せました、バレバレだけど家康でした(笑)
次は家康と三成中心の話書きたいなーと思ってるんですが、
例にもれず筆が遅いので気長にお待ちください(笑)
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