我が家に突然新たな同居人がやってきた。


人間のようで動物のような何ともいえない姿の子犬。
こんな生き物を遣わしたのは突然降ってきた雨の仕業だろうか。
その新たな同居人は今、リビングのソファに丸まってくつろいでいた。



「じゃあこの子に名前つけてあげなきゃね」



「名前ぇ?」



「当たり前。ずっと名無しって訳にもいかないでしょう?」



傍らに丸まっている子犬の耳を撫でながら佐助が言う。
撫でられた子犬は嬉しそうに目を細め、小さな尻尾をぱたぱたと振った。



「けど名前ったってなぁー・・・・」



頭を掻きながら、ソファに丸まる子犬を政宗は見下ろす。
子犬は政宗の視線を感じ取ってか、さらに尻尾を大きく振ってみせた。
何がそんなに嬉しいんだかと、政宗は子犬を抱き上げ溜息をつく。



「政宗様、帰ってらっしゃるのですか?」



同時に玄関から声がした。
買い物から帰ってきた政宗の同居人、小十郎の声に政宗の手の中の子犬は耳をそばだてる。
小言の多い同居人の帰宅に、
子犬のことをどう話したものかと思案する政宗をよそに、小十郎がリビングに姿を現した。



「突然の雨で傘をお持ちになってないだろうと心配しておりました」



「あー小十郎・・・・・・」



小十郎に気付かれぬようにさりげなく、政宗は子犬を隠すように向きを変える。
帰ってきたら子犬のことを打ち明けるつもりであったが、
いざ言うとなるとなかなか言い出しづらいもので、
この場をどうしたものかと政宗と佐助の間に妙な雰囲気が流れた。



「おう、猿飛も一緒だったか」



そう言って佐助の方に向き直った小十郎にひとまず安堵した瞬間、



くしゅん!!



子犬のくしゃみに三人の視線は一気に子犬に向いた。
リビングには一瞬沈黙が訪れたが、
子犬が小さく鼻をすする音で我に返った小十郎が再び口を開いた。



「こ、子犬?」



「そう子犬。今日から旦那の飼い犬になったからさ」



「・・・・・・そういうことだ小十郎」



最早やけくそといった感じで、佐助の後に政宗が続く。



「・・・・・確かにこのマンションはペットは禁止されておりませんが・・・

ですが政宗様、生き物を飼うというのは責任のいること故成り行きで事を決めるというのはいささか――」



またいつもの小言が始まったと思ったが、しかしその言葉は続かなかった。
子犬に目を向けた瞬間小十郎の動きが止まる。
子犬の小十郎を見上げる瞳と、小十郎との視線が互いに合ったまま、妙な間が二人の間に流れた。



「・・・おい、小十郎?」



沈黙したままで何やら声をかけにくい様子の小十郎に政宗は恐る恐る呼びかける。



「・・・――この小十郎を眼で落とすたぁ・・・やるじゃねぇか小僧・・・」



押し黙ったままの小十郎の口がふと緩められ、出てきた言葉は意外なものだった。



「は?ちょっと旦那何言ってんの」



「今回は大目に見ましょう政宗様、この子犬を飼うこと許可いたします。」


打って変わった小十郎の態度に、今度は政宗と佐助の動きが止まる番だった。



「・・・あーらら意外な展開」



「言ってるそばから成り行きじゃねぇか小十郎・・・・」





こうして満場一致のもとに我が家に新たな一員が迎え入れられた。





*Episode3へ続く*

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