新たに我が家に家族が増えた。
命名、「幸村」





「随分とここに馴染んできたみたいだねぇ」



久しぶりに政宗の家を訪れた佐助がそう言うように、
幸村は新しい環境にすっかり順応していた。



「・・・馴染みすぎってのも困りもんだぜ?」



後に続くのは政宗の溜息。
ソファに腰掛けた政宗の胸元には、
短い腕をいっぱいに伸ばして服にしがみ付く幸村の姿があった。
しかしその短い腕では長くはもたず、ずり落ちてはまたしがみ付くという行動の繰り返し。
その必死さが傍目からはとても可笑しげに映った。



「おい、笑い事じゃねぇよ」



堪えきれずに笑い出す佐助を政宗が睨む。



「悪い悪い、あまりにも可笑しくってつい、さ」



「・・・・・・・・・」



「で?どうして幸村の旦那は引っ付いてるわけ?」



しがみ付いたままの幸村の頭を撫でて佐助が尋ねる。
そこへキッチンから出てきた小十郎が答えた。



「どうやらそこが一番居心地のいい場所らしくてね、なかなか離れようとしないのさ」



「・・・おかげで身動きがとれやしねぇ」



頑として自分のところから離れようしない幸村を見て、政宗は再び溜息をつく。
ここまで懐かれるのはまあ満更でもないことだが、
こんなに四六時中引っ付かれていては何もすることができない。
どうしてもという時は引き剥がすしかないのだが、どこからそんな力が出るのか
離そうとすると幸村は更にしがみ付いてくる。



「おい、幸村離れろって。動けないだろうが」



「諦めたら旦那?どうやらご主人様がお気に入りのようだし」


「ずっと座ったままでいろってのか?無茶言うな」



他人事と思って面白がる佐助に舌打ちをし、政宗は幸村を離そうとその服の裾を引く。
しかし、それでも幸村は離れようとしない。

政宗は今度は少し強めに裾を引いた。
その拍子に幸村の手が政宗から離れる。
引き剥がされた幸村は腕を伸ばして必死に元の場所へ戻ろうとするが、その腕が届くはずもなく
服を摘まれたままソファの空いたところへ下ろされた。
その隙に政宗が立ち上がり、
ソファの幸村が政宗の後に付いて行こうと後ろ足で立ち上がった瞬間。



「ましゃむね!」



舌足らずな甲高い声が部屋に響いた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・!?」


瞬間、部屋の中が静まり返った。
一歩を踏み出したまま止まっていた政宗が、声のする方を振り返ると
ソファに立っていた幸村が政宗の足元に駆け寄りしがみつく。



「ましゃむね!」



政宗の足元から再び響く声。
その声はやはり幸村が発したものだった。



「ゆ、幸村が喋った!!!?」



「ちょっとマジかよ旦那!」



「おい一体何食わせたんだよ小十郎!!」



「人聞きの悪いことを!この小十郎の料理にやましい所などございませんぞ!」



未知の出来事に驚愕した三人は堰を切ったように騒ぎ出す。
当の幸村は得意げに尻尾を振りながら政宗の足元ではしゃいでいた。



未知との遭遇の驚きは止まることを知らない。






*Episode4へ続く*

幸村が喋った!!(某ハ○ジ)
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