空は快晴、陽当たり良好、
そんな晴れた日に、一人と一匹は散歩に出かけた。



「どうだ、広いだろ幸村!」



辺りに響き渡る政宗の声。
傍らには子犬の幸村。
到着した先は公園だった。
こんな晴れた日に、家にいるのもつまらないだろうと小十郎の一言で、
政宗は幸村と共に近所の公園を訪れていた。



「こーえん!」



昼過ぎの公園は子供たちや、犬の散歩をする人たちで賑わっていた。
普段はあまり訪れることのない公園に、幸村は耳を立て尻尾を振る。
その喜び様に政宗の声も自然と弾んだ。



「思う存分走り回っていいんだぜ、幸村」



「しょうち!」



その一言と共に幸村は駆け出した。
見るもの全てが幸村にとっては珍しいらしく、
あちこちを回っては短い尻尾を振ってはしゃいでいる。



「あまり離れ過ぎるなよ!」



そう声をかけながら政宗は走り回る幸村を眺めていた。




***




そうして辺りを散策し始めて暫く経った頃。



「まぁ何てお可愛らしい!」



公園の一角で幸村は一つの出会いを果たしていた。
ちょこちょこと歩き回る幸村を見て声を上げたのは二人連れの男女。
その傍らには白い大きな犬が尻尾を振りこちらを見ていた。



「とても愛らしくていらっしゃいますわ、犬千代様!」



「うむ、そうだな!だがまつも愛らしいぞ!」



「まあ嫌だ犬千代様ったら!」



弾む声が辺りに響き渡る。
犬千代、まつと呼び合う何やら賑やかな二人組を幸村は交互に見上げる。
辺りに無駄に撒き散らされている二人の明るい雰囲気。
最初はそれこそ不思議そうに眺めていた幸村だったが、
その雰囲気に幸村は自然とつられ始めていった。



「ゆきむら!!」



「まぁ幸村とおっしゃるのですね!私はまつ、こちらは四郎丸ですわ」



「そして某は利家だ!」



「まつ、としいえ、しろーまる!」



幸村が喋ることに対する反応は微塵もなく、会話は盛り上がる。
更に明るさを増したその雰囲気の中、



「誰かと思えば魚屋のHappyなお二人さんか…」



二人と二匹の輪の外で、後ろから追いついた政宗が一人呟いていた。



「…で、オレは一体どうすりゃいいんだ?」




***




「まぁ政宗殿!」



「ましゃむねー」



「相変わらず賑やかというか…騒々しいというか、あんた達二人は…」



その後ようやく政宗に気付いたまつが声を上げ、政宗もその輪に加わった、
というよりも半ば強制的に加えさせられた。
昔から懇意にしている魚屋である前田夫婦。
しかし何年たってもこの夫婦の勢いに政宗は慣れることができない。



「そうか、幸村は政宗殿の飼い犬だったか!」



「それでは慶次が言っていた“政宗のところのおチビさん”とは幸村殿のことでしたのね!」



「あぁ、お使いの時の話か…」



そういえば前田の甥っ子と幸村は一度面識があったのだと、
思い出しながら政宗は答える。
その間も二人と幸村の会話はどんどん発展していき、盛り上がりを増していく。



「あの時は慶次の奴が世話になったな!」



「けーじ!」



「幸村殿また今度お店に来て下さいませ、慶次も会いたがっていますゆえ…」



「某たちもな!」



「しょうち!」



慶次の話から、好きな魚の話まで、
次々と会話は繰り広げられ止まることを知らない。
そしてその盛り上がりが最高潮に達した時、



「そうですわ!これも何かの縁、これからは頻繁にこの公園で語りあおうではありませんか!」



政宗の耳に聞き捨てならぬ言葉が飛び込んだ。



「それは良い考えだな!」



「ちょ…アンタら何を…」



「しょうちー!」



話に割り込もうとした政宗だったが時既に遅し、
乗りに乗った幸村の一声で全てが決まった。



「おいおいマジかよ…」



この能天気な二人に頻繁に会っていては身が持たないと、
断りたくはあったが最早政宗にこのノリに入っていける力はない。
しかも幸村が喜んでいる、
それを見ていると尚更断るわけにはいかなかった。



「全く…俺ってやつは…」





とんだ親バカになったもんだと、
昼過ぎの公園、一人政宗がこぼしたという。






*Episode8へ続く?*

ひょんなことから公園デビュー。
一応筆頭に親バカという自覚はあるようです(笑)

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