某日、伊達家のリビング。
鳴り響くテレビから聞こえた言葉に、
伊達家の愛犬である幸村は不意に何かを思いつき立ち上がった。
全てはその目的を遂行する為に。




*数十分後。〜佐助の場合〜



「え、そういう場合は何をしたらいいかって?」



所は変わって隣人の佐助の住まい。
駆け込んで来た幸村の片言とジェスチャーを見て、話を飲み込んだ佐助が答える。
その佐助に幸村は力強く尻尾を振り、そして頷いた。



「うーん改めて聞かれると難しいけどねぇ…」



「…ここはまぁ無難に手紙、とかかなぁ…?」



「てがみ?」



呟く佐助の側でその首が傾げられる。
自分の言葉を繰り返す幸村に佐助は頷いた。



「そ、旦那の家にも来るでしょ。玄関に郵便屋さんが手紙持ってさ」



「てがみ!!」



どうやら合点がいったらしい幸村は、
再びその尻尾を強く振る。



「ありがとうって気持ちを手紙に書いたらいいんじゃないかな」



「しょうち!」



その言葉を聞くや否や幸村はまた走り出した、
更に次の目的地へ。




*更に数十分後〜元親の場合〜



「うーん、そういう場合ねぇ…」



更に所は変わり、上の階の新婚夫婦の住まい。
幸村の問いかけ、もといジェスチャーに元親が首を捻る。
その前には期待に満ちた眼差しを向ける幸村がいた。



「そりゃやっぱドーンとインパクトがなきゃな」



「いん、ぱくと?」



「おう、思いっきりびっくりするような贈り物よ!」



そう言って腕を大きく広げる元親に、幸村もその尾を振る。



「例えばだなぁ…こう目の前でリボン結んで、

プレゼントは私、なんてなったら最高にインパクトだよなぁ」



とうとうと熱弁をする元親。
その話に熱心に相づちをうちながら、元親の背後に迫る影を幸村は見た。


数秒後、



「貴様は色ぼけた発想しかできぬのか!」



新婚夫婦の妻、
元就の手に握られたお玉が元親の脳天を華麗に直撃した。




*更に更に数十分後〜慶次の場合〜



「なるほどねぇ、そいつぁ重要な問題だ」



更に更に所は変わって、近所の魚屋。
目の前でちょこちょこと動く幸村を見て、慶次が膝を叩く。



「そういう時はやっぱり花だな!」



「はな!」



繰り返す幸村に慶次が頷く。
それに勢いを増して慶次の語調も上がっていった。



「そうそう、華麗にやさーしく手渡してやればさ、渡された方はイチコロってもんよ!」



「いちころ!」



「うん、良いねぇその調子!」



「しょうち!!」



そう言って力強く頷くと、幸村は力の限り走り出した。



「あっと幸村お釣りー!…ってありゃーもういないや…」



そのあまりの速さに、呼び掛けた慶次の声が宙に舞った。




*〜そして伊達家〜



「…で、その結果こうなったってか?」



その夜、幸村から手渡されたモノを見て政宗が目を瞬かせた。



「色んなところ回ってアドバイス貰ったらしいよ?勿論オレのところにもね」



横から佐助が口を挟む。
その言葉を聞きながら政宗は手渡されたモノを見下ろした。

筒状に丸められた紙に、
それを結んだリボン、
そして筒状の紙に刺さった花、

確かに貰ったアドバイスの要素は全て含んでいるが、
実に説明しがたい形状のものがそこにはあった。



「にしてもよくこんな事出来たな…リボン結ぶとかよ」



「それは私が手伝いました、政宗様」



「お前も一枚噛んでるのかよ小十郎…」



思わぬ協力者の数に驚かされながら、
政宗は自分の足元の幸村に目をやる。



「ま、ありがたく受け取っとくぜ。Thanks幸村」



そう言って足元で得意気に胸を張る幸村を見て、笑みを浮かべた。






*Episode9へ続く?*

父の日だから、と思って当日に間に合わなかったブツです、
何か幸村からプレゼントさせたいなと思って父の日に便乗しました。
ちなみに冒頭で幸村が見たのは父の日のニュースですよ(事後説明(笑))

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