「それで、何をしてるんです君は」
ペンを取り机に向かう横で、先程から離れない視線に問いかける。
その正体はもちろんウォーカーのそれで、
隣で彼は身を乗り出して机に寄りかかりこちらをじっと見ていた。
「何って、リンクを見てるんだけど」
「…それは分かってます、何をそんなに凝視しているのかを聞いてるんです」
しれっと答える彼にため息をつくと同時にペンが軋む。
相変わらずずれた答えは、どこか調子を狂わせる。
しかもその眼は未だにこちらを見据えたままなのだから尚更だった。
「…初めて見るなぁと思って」
「何がです?」
ペンを走らせながら横目でウォーカーの方を見ると、
彼がしげしげとこちらを覗いてるのが分かる。
「眼鏡姿のリンクがですよ。僕の前でかけたことはないでしょう?」
「…確かにそうですね」
「だからこうやって近くで見てるんです」
そう言って彼は更に興味深そうにこちらに目を向けてくる。
それにしてもこの距離はどうにかならないものか。
こんな近くにいられては、ペンが軋む度に自分の動揺が伝わるようで落ち着かない。
それに、
「そういう格好も似合ってて好きですよ」
そう言って微笑まれてしまっては、もう手の施しようがなかった。
「…作業が遅れたら君のせいですからね」
「何か言ったリンク?」
「いいえ、何でもありませんよ」
(Fin)