“Sweet Dreams”




「ミハエル、」


「………」


「…そんなにくっ付いていては動けない」


暗い寝室の中、
兄貴の低く優しい声だけがオレの耳に響いていた。




何か悪い夢を見た時、オレは決まって兄貴のところに行く。
何も言わず寝床に入り込んで、兄貴にすがり付く。
勝手に潜り込むオレに兄貴は怒ることなく、
只、全てを受け止めていてくれている。
何も言わないけれどその腕からは優しさが伝わってきた。


さっきまで見ていた悪夢がまだ脳裏に残っている。
暗くて深い、怖い夢。
そんなオレの背を兄貴が撫でてくれると、不思議と心が落ち着いた。


「…落ち着いたか？」


そう聞かれて、オレは無言で頷く。
ガキみたいだと思われるようで何だか少し照れ臭いけれど、
ただ黙って背中を撫でていてくれる、優しい、兄貴の手。


「…ネーナには言うなよ」


けどふと思い出して口を開く。
ネーナにはこんなところは見せられない、
ネーナの前ではオレは頼れる兄貴でいたいから。
オレがこんなことが出来るのは兄貴の前だけなのだから。


「今笑ったろ兄貴…！」


「悪かった。つい、な」


そんなオレの強がりに気づいて兄貴が笑う。
怒るオレに兄貴はそっと優しく頭を撫でてくれた。
兄貴の優しさが掌を通して伝わってくるような、
そんな、不思議な感覚だった。


「…本当に言うなよ兄貴？」


「別にそんなつもりはない、だから…」


その後に続くのは、髪に触れる掌と、頬に触れるほどの口付け。


「…安心して眠れ、ミハエル」


心地よい温もり、段々と眠りに落ちていく意識の中で、
耳元で囁く兄貴の声を聞いていた。




“おやすみ、よい夢を”






（Fin）
宣言どおりミハエル視点verです。
余談ですがタイトルはおやすみって意味で、小さい子供に言うようなニュアンスだそうな。