「…遅い」



「悪い、待たせたな」



満開の桜の下、集う人影が二つ。
遅れて姿を見せた元親の姿に、元就の声が続く。
しかしその声はいつもより穏やかさを含んでいるように見えた。



「今日は随分とご機嫌だな?」



「こんな満開の桜の下では、咎める気も失せるというものよ」



そう言い見上げる顔に、薄紅の木漏れ日がかかる。
二人の頭上に咲くそれは、確かに日常を忘れるほど美しくあった。



「そうだな、見事なもんだ」



思わず感嘆の声が口をつく。


春に魔力があるとするなら、
まさしく満開の桜がそうなのだろう。
暖かな風に舞う桜に自身の心も凪いでいくのを元親は感じていた。



「そんなら、この桜にはずっと咲いててもらわなきゃな」



「…情緒のないことを言うな、馬鹿者が」





満開の桜の下、集った二つの人影。
誰しもに等しく訪れる春の祝福が、この二人にも訪れようとしていた。











web拍手用だったチカナリです。
春めいた話をいつまでもweb拍手にのっけててスイマセン(苦笑)
もう今7月だよなんてこったい;

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