饗宴のきらびやかな明かり。
その明かりから逃れるように来たそこは、眼下を海に臨む園。

陽の落ちた庭に、暗がりに聞こえる波の音が響く。
星明かりだけが瞬く夜が、
この庭を普段とは別の世界のものへと変えていた。



「宴はもうお開きか?」



声のする方へ振り向けば、
現れたのは家に仕える隻眼の男の姿。



「公爵とあろう者がこんなところにが一人で来るもんじゃないぜ」



「宴は抜けてきた…貴様こそ使用人が勝手にうろつけくでないわ」



海からの風を背に受ける二人。
饗宴の華やぎも人の気配もなく、いるのは不遜な態度の使用人のみ。
だが当主である男にとってこの瞬間は不思議と居心地の良いものだった。



「戻らないのか?」



「我がいなくとも宴は成り立つ」



「そっか、それじゃあ…」



ふいに男が近付く。
その気配に顔を向けると、そこには恭しく手を差し出す男がいた。



「このまま二人だけの宴と洒落こみますか、公爵殿?」



暗がりの中、自身の眼と男の隻眼が重なりあう。
その男の海のようなおおらかさに魅せられてか、
当主はためらいもせずその手を取っていた。










web拍手用だったチカナリ話です。
明治とかそこらへんの時代の貴族パラレルです一応、
分かりづらくてスンマセンと土下座したい一作(苦笑)

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