赤い花が咲いていた。
野辺に一つ咲いた花、
それを見つけたのは偶然のこと。
いつの間にか人知れず咲いていた、名も知らぬ花。
そっと手折ったその手の中でそれは赤く燃えていた。
「何をしている、元親」
一迅の風。
草の波打つ音が響く。
共に訪れた人影は、その髪を緩やかになびかせて佇んでいた。
「花がな、咲いてたんだ」
「…花?」
「ああ、ここら辺じゃ見たことないやつがな」
夕陽が沈み始める。
互いの言葉が紡がれる度、ゆっくりと空が染め上げられていく。
赤い夕陽
赤い花
全てが赤い、そこに只二人だけ。
「貴様がそのような風雅を心得ていたとはな」
「何でかな、無性にコイツに惹かれちまってさ」
赤い世界の中、
そうして見据えたのは互いの瞳。
その刹那、脳裏で重なったのは花の姿と―
「―ああ、そっか」
「なんだ、いきなり」
「いや、何でもねぇ」
「…ふん、訳の分からぬ奴よ」
「元就、」
「……?」
「これやるよ」
そっと花を、髪に挿す。
掌の花が、今度は陽を浴びた茶褐色の上に咲いた。
「くだらぬ、このような…」
「まぁそう言うなよ、」
風が吹く―
「似合ってるぜ、お前に」
赤い夕陽に重なるのは、真っ赤な花弁。
小さな太陽のような赤が、
風を受け髪に咲いて揺れた。
「ほらな、やっぱ似合ってる」
*終*
中林三恵さん作詞作曲「赤い花白い花」からイメージして書いた話。
右上の歌詞がその歌詞です。→全部の歌詞を見る
台詞メインの小話にしたかったがあえなく撃沈、無念!
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