その手を取ったのは、ほんの偶然だった。


監視の任についてから分かったことだが、
アレン・ウォーカーは方向感覚が鈍い、
いや全く皆無と言ってもいい。

こちらが少し目を離した隙にすぐ姿が消える、
何度も通っているはずの道を間違える、
数え上げればきりがない。




今日もまた書庫室へ向かう途中彼の姿が消えていたことに気づき、
振り返れば一つはずれた通路に歩く彼の姿を見つける。


そしてそれは、ほんの偶然だった。



「待って下さいウォーカー!」



違う方向へ歩いて行く彼を止めようと手を伸ばした時、
只制止するだけで良かった筈の手が、彼の手をしっかりと掴んでいたことに気づく。



「え、あの…リンク?」



自分でも予想だにしない行動に驚かされたが、
当の本人も同じくらい驚いたらしかった。
二人共手を繋いだままの状態で互いの顔を見合わせる。

何か言わなくてはいけない、
そう思いながら次の言葉がなかなか出せず、妙な間が訪れていた。



「…書庫室はそっちではないと言っているでしょう」



そうして困惑した頭の中、ようやく発した言葉がこれだった。



「あ、すいませんリンク…」



その言葉に彼もやっと口を開く。

だが困ったことに、一旦勢いで繋いでしまった手をどこで解いていいかが解らない。
再び訪れた沈黙にこの場をどう切り抜ければ迷っていると、
先に口を開いたのは彼だった。



「……リンク、顔が赤いですよ」



「…君こそ、顔が赤い」



「リンクがいきなり手なんか繋ぐからでしょう」



「君がすぐ道を間違うのがいけない」



前に立つ彼の顔は赤くなっていたが、
それと同じくらい自分の顔が赤くなっているのが分かる。



「…ほら、もういい加減離して下さいよ」



その一言で繋いでいた手がようやく離された。



「次からは気をつけて下さい」



「はいはい、分かってますって」



前を歩く彼に着いて行きながら言葉を交わす。


彼が背を向けているのが、今はせめてもの幸いだった。
繋いだ掌の感触を思い出し、
また熱くなった顔を見られないで済んだのだから。







(Fin)


自分の書くリンアレは何だかいつでも友達以上恋人未満な気が(笑)
そんな微妙なリンアレが大好物なのですよ!

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