「全く、まさかお前と食事に付き合うことになろうとはな…」



シャンデリアの灯る下のテーブルで、目の前の男を見ながら呟く。
その当の本人は私の呟きにはお構い無しと言うように只満面の笑みを浮かべていた。



「はひ?何か言いました大佐?」



「…口に物を含んで喋るな少尉」



その顔があまりに呆けていて、思わず小さな溜め息が漏れる。
嬉しげに食事を進めるこの男には、全く軍人らしさは感じられない。
まるで無邪気な子供を相手にしているようなそんな雰囲気に飲まれていた。



「本当にお前は何も考えていなさそうだな」



ついそんな言葉がこぼれる。
この能天気な男に少々嫌味を言った、そのつもりだった。



「そうですね、オレは大佐のことだけで頭いっぱいですから!」



だがそれに対して返ってきた言葉に逆に言葉を失う。
毒気を抜かれるとはこのことだろうか、
よくも臆面もなくそんなことが言えるものだと半ば呆れたが、
多分これはコイツの素なのだろうとその後妙に納得する自分がいた。



「…なるほど、お前なりに精一杯考えているということか」



「……大佐?」



目の前の惚けたこの男に、つい苦笑する。

どこまでも軍人らしからぬ男、
しかしそれは逆に私の周りには今までいなかった男だった。



「口に食べかすが着いている、少尉」



「へ?あ、本当ですか!?」



「全く…世話の焼ける奴だ」



図らずも今夜食事を共にしたことは正解だった、


本当に、この男は見ていて飽きない。





(Fin)


20話の食事に行った二人を勝手に模造。
我ながら変なタイトルを付けたと後悔orz