「そういえば“コレ”が最初なんですよね」
「…はい?」
今や恒例となったティータイムの最中。
ふいに思い出したように呟くアレンの声に、
紅茶を淹れるリンクの手が止まる。
「リンクが最初に作ってくれたもの。コレだったなぁと思って」
そう言って視線をテーブルの上に落とすアレン。
彼の視線を追うように、リンクもまたテーブルへと目を向け、
その先にあったものを見て合点のいった顔を見せた。
そこに置かれていたのはパンプキンパイ。
その半分は既にアレンによって食べられていたが、
間違いなくそれは先ほど自らが作ったものだった。
「ね、そうでしょう?」
「そういえば…そうですね」
大正解、と得意気な顔のアレンに、
リンクも思わず頷いてみせた。
「それにしても、何故いきなりそんな話を」
再び動かし始めたリンクの手元で、ティーポットに熱い湯が注がれる。
「いえ、何となく懐かしいなぁと思って」
ティーポットから立ち上る湯気を見つめながら、アレンは答えた。
次第に香り始めた紅茶の香りが、二人の間に静かに漂っていた。
「あの時食べたのも美味しかったんですけどね、」
「……?」
「今はもっと美味しくなってる気がするんです」
続く彼の言葉に、
リンクはポットに向けていた視線を彼へと移した。
彼の言動にはいつもどこか突拍子のないところがあり、
今回もまた、その言葉の意味をリンクは測りかねていた。
視線を合わせた二人。
そんな一瞬の沈黙を経た中で、
「きっと、リンクと一緒に食べてるからですね」
目の前のリンクの様子を暫く窺っていたアレンが、ふいにそう言い笑う。
そのあまりに屈託のない笑顔、
そして不意打ちとも言える言葉に、
思わずずり落としそうになる茶器をリンクは必死に支えていた。
「また君はそういう事を臆面もなく…」
「え、何がです?」
無意識が故なのか、
全く悪びれることのないアレンにリンクの頭が垂れる。
本当に、これにはいつまでたっても慣れることが出来ない。
「…ほら、お茶が出来ましたよ」
不意打ちの一言に対する動揺はなかなか治まるものではなかったが、
そんな自分を悟られてしまわぬよう、漸く一言だけ告げた。
そうして何事もなく再開されるティータイム。
淹れすぎで少し苦くなった紅茶だけが、胸の内の動揺を知っていた。
(Fin)
アレリンっぽいけどリンアレです!(先に言っとく笑)
カボチャはこの2人の永遠のマストアイテムですよ☆