今朝から広がっていた曇天に、
雪がちらついたのは昼下がりのことだった。



「ほら、雪ですよリンク!」



空を舞う雪に気づいた彼は、まるで幼い子供のようにはしゃぐ。
雪などこれまでに飽きるほど見ているだろうに、
しかし彼にはそんなことは関係ないようだった。


次第に数を増す雪に街が霞む。
遠くに見える街並みも、全てが白い曇天に溶けるように。

その白の中を歩く彼の背を捉えながら、ただひたすらに歩く。
街の音に紛れて雪混じりの道を歩く二人の足音が響いていた。



その間にも雪は降り続き、路地にはうっすらと足跡が付き始める。

そんな、冬のせいだったのかもしれない。



空を見上げ、彼が雪に手を翳したその瞬間、
ふいに彼の背中がひどく儚いもののように見えた。


目を離せばそのまま白銀に飲まれてしまいそうな、後ろ姿。
そんな言い様のない不安が脳裏を襲い、
気づけば彼の腕を掴み引き寄せる自分がいた。



「リンク?どうしたんですか」



「……」



掴んだ手に力が籠る。
手から伝わる暖かさが、彼がまだここにいることの証。
その時吐いた息は、それに対する安堵だったのだろうか。



「…あまり走ると転びますよ」



思わずそんな嘘が口をつく。




雪が連れてきた一抹の不安。
出来ることなら、彼が目の前から消えることのないよう、
いつまでもこの温もりが側にあるよう、




そう強く願っていた。







(Fin)
最近の危なっかしいアレン(14番目的な意味で)から妄想した産物。
ずっとアレンを監視してたリンクはどういう心境なんでせうね、としみじみ。