(もし神がこの身に祝福を授けてくれるというなら)



眠るその傍らに立ち、その寝顔を覗き込む。
薄暗い天井の下、深いに闇にさ迷う意識。
強く握りしめた掌。
揺れる肩。
振り絞るように、懺悔を繰り返す。
許しを乞う。
途切れ途切れの声は、微かに震えていた。
固く瞑った瞼。そこから落ちる滴。
その瞳に潜んでいるのは恐怖、孤独、悲壮、後悔。



いずれにせよその暗闇から、
其処から救い出してやれない己がもどかしく、腹立たしく、そして何より悲しく。



名前を呼んで頬に手を触れる。
触れられた手の感触に滴を湛えた目が開かれ、見上げる。



だがこの手はどうしようもなく無力で、
只々その頬を優しく撫でることだけを繰り返す。
幾度も、幾度も。



(神のようにその手で奇跡を起こすことができたら)
(しかし残念ながらこの手は只の人の手で)





(憐れな、無力な、只の掌)






(Fin)
救われたい苦悩、救えない苦悩。